「槍ヶ岳、いつか登ってみたい。でも50歳の自分の体力で、しかも一泊二日で本当に大丈夫かな…」
そう思ってる人、意外と多いんじゃないかと思う。自分もまさにそうでした。
50歳の会社員で、運動といえば続けているのはランニング。
2年前に燕岳から見たその圧倒的な存在感・・・
「あんなとこ行けるのかな・・・」そう思った。
それから「槍ヶ岳」の名前には、なぜかずっと心を掴まれていた。
「槍行こうぜ!」
山友の先輩から声が掛かった!
「ついにチャレンジか・・・」
コースは、新穂高温泉から飛騨沢ルートで槍ヶ岳山荘泊の1泊2日ルート。
この記事では実際に歩いたコースタイムや、きつかったポイント、そして「50代からでも挑戦できるのか?」に、自分の経験ベースで答えていきたいと思います。
結論:50歳・一泊二日でも槍ヶ岳は狙える。ただし条件つき
先に結論から言うと、50歳・一泊二日での槍ヶ岳登頂は十分に現実的だった。ただし無条件にではない。
- 日常的な有酸素運動の習慣(自分の場合はランニング)
- 標高2,800m~3,000m超えからの「息の上がりやすさ」を織り込んだペース配分
- 夏山ならではの紫外線・熱中症対策と、天候急変への備え
この3つが揃っていれば、50代からでも十分に挑戦する価値がある山だと思いました。
以下、実際の行程を振り返りながら説明していきたいと思います。
ルートとコースタイム(新穂高温泉 → 槍ヶ岳山荘)
歩いたのは、新穂高温泉から右俣林道・飛騨沢を登る、槍ヶ岳ではオーソドックスなルート。

実際のヤマレコの記録になります。
山行7時間11分、休憩55分、合計8時間6分。距離13.5km、獲得標高2,028m。
数字で見ても、体感でも、なかなか長い一日だった。
夏山の必需品。紫外線・熱中症対策は本気でやったほうがいい
8月の登山で正直いちばん気を使ったのが、暑さと日差し対策。稜線に出ると日差しを遮るものが何もないので、標高が高くても油断できない。
今回準備したのはこの3つ。
- アームカバー:半袖でも腕だけしっかり紫外線カット
- 後付けのネックシェード:帽子に取り付けて首まわりの日焼け・熱を防ぐ
- メッシュフーディー:着たほうが涼しいと言われて半信半疑だったけど、実際着てみると通気性のおかげで汗冷えしにくく、体感がだいぶ楽だった
特にメッシュフーディーは「暑いのに着るの?」と思う人も多いと思うけど、直射日光を遮りつつ風を通すので、素肌に日差しを浴び続けるより涼しく感じた。夏山であれば、日焼け止めだけに頼らずこのあたりのウェアも揃えておくと安心。
水分補給、実はそんなに困らなかった
夏山でいちばん気を使うのが水分補給だと思う。
とにかく水は重い!荷物を軽くしたい気持ちと、足りなくなる不安の間でいつも悩ましいポイントですよね。
今回も、1.5リットルのプラティパスと400mlのナルゲンボトルを準備。
スタート時にこれを満タンにしてスタートしました。
でも今回歩いてみて分かったのは、このルートは水場・小屋が要所要所にあるので、意外と水分補給には困らなかったということ。
具体的には次の3か所。
- 穂高平小屋(スタートから約1時間)
- 槍平小屋(行程中盤)
- 最終水場(その名の通り、ここが登山道での最後の水場)
図にするとこんな感じ。

この3か所で飲み物の補給が出来るので、思っていたほど担ぐ水の量を必要以上に増やさなくても大丈夫だった。
ただし最終水場から先は文字通り「最終」なので、槍ヶ岳山荘までの残りの行程分はここでしっかり補給しておくのがポイント。
あと、槍平小屋、最終水場は蛇口から流れっぱなしなので、いつでも給水が可能だが、穂高平小屋は小屋が開いていないと購入できないので注意が必要です。
快晴からの豹変。標高が上がるほど天候は容赦なくなる

出発時、新穂高温泉は雲一つない快晴だった。これは順調にいけそうだな、と正直ちょっと気を緩めていた。
ところが槍平小屋を過ぎたあたりから雲が広がり始め、千丈乗越を超えた直後、いきなり雨に降られた。

低山では味わわない、標高が上がるほど天候が容赦なくなる感覚。これは今回いちばん実感した「アルプスならでは」のリスクだった。天候急変を前提にした装備を持っているかどうかで、行動できるかどうかが変わってくる。この日実際に助けられたレインウェアやザックなどの装備は、また別の記事でじっくり紹介したいと思う。
「走れるのに、登れない」―― 3,000mの壁
ランニングを続けてきたこともあって、最終水場まではかなり快調なペースで歩けていた。
でも、そこから先は斜度が一気にきつくなって、ペースダウン。人生で初めての3,000m超えだった。
ペースを落としても息が上がって、なかなか呼吸が整わない。平地の走力だけではどうにもならない「高度」という壁を、身をもって知った瞬間だった。
50代でこれから挑戦する人には、正直に伝えておきたい。
**体力に自信があっても、標高2,800m~3,000mを超えたあたりからは、それまでと同じ感覚では歩けなくなる。
**逆に言えば、そこさえ織り込んでペース配分できれば、決して無理な行程じゃない。
槍ヶ岳山荘、そして雲海の上での山頂アタック

14時55分、槍ヶ岳山荘に到着。ガスの切れ間から穂先が見えた瞬間、それまでの疲れが一気に軽くなった。

翌朝、山頂アタックのため小屋を出ると、稜線は一面の雲海に包まれていた。雲の切れ間から差し込む朝の光は、この登山で一番記憶に残っている景色。

穂先の梯子と鎖場は、聞いていた通りの緊張感だった。ヘルメットとグローブをしっかり装着して、一歩ずつ慎重に登る。「槍ヶ岳3180m」の標柱にたどり着いたときの達成感は、これまでの登山では味わったことのないものだった。50歳になって、雲海の上に立つという経験ができたことに、素直に感謝したい。
50代から槍ヶ岳に挑む人へ
今回の山行で得た実感は、大きく2つ。
1つは、平地での走力と高所での行動力は別物だということ。
ランニングの持久力は序盤のペースを支えてくれたけど、標高が上がってからの息の上がりやすさは、また別の準備が必要だと感じた。
もう1つは、夏山ならではの暑さ対策と、天候急変への備えが行動の安全度を大きく左右するということ。
稜線に近づくほど天候は変わりやすいし、日差しも強い。「使わないかもしれないけど持っていく」という装備の判断が、結果的に自分を助けてくれた。
50代からでも、槍ヶ岳は十分に狙える山だと思う。
ただし体力・ペース配分・装備判断のどれか一つでも欠けると、一気に厳しくなる山でもある。
今回実際に使った装備 ―― ザック、シューズ、トレッキングポール、ヘルメット、そしてアームカバーやネックシェードといった暑さ対策グッズについては、次の記事でひとつずつじっくり紹介する予定。装備選びに迷っている人は、ぜひそちらもあわせて読んでほしい。